2015年6月26日金曜日

『影が行く』感想

『影が行く』
ジョン・W・キャンベル・ジュニア著/中村融訳
創元SF文庫「ホラーSF傑作選 影が行く」所収 初版2000年8月25日

 あらすじ・・・アメリカ南極越冬隊が見つけたのは、氷に封じ込められた醜悪な異星人だった。死んでいると思われたそれは、解凍されると生き返って逃げ出し、犬を襲った。それは犬を取り込み、同化し、複製しようとしていた。それは何でも模倣できる能力を持つ生物だった。さらに、人間の中にもすでに同化された者がいることが分かる。やがて隊員たちは皆、同じ事を考え始める。「おれのとなりにいる男は、人でなしの怪物なのか?」

 ジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体X」(1982年)が好きで、その原作として読んでみたかった作品です。読んでみて驚いたのは、カーペンター監督が原作にかなり忠実に映像化していることでした。登場人物も、かなり数が減っていましたが、原作通りの名前で出ています。
 外界から閉ざされた空間で、疑心暗鬼に陥りながら、この怪物を退治しようとする登場人物たちの、葛藤と努力がサスペンスフルに描かれた名作です。

  作者のジョン・W・キャンベル・ジュニアは、作家としてよりも、「アスタウンディング」誌の編集者として有名な人物です。掲載する作品に高いクォリティーを要求し、SFの水準を引き上げた人物だそうです。彼の下から、アシモフ、ハインライン、ヴァン・ヴォークトらが輩出されました。
 
 「ホラーSF傑作選 影が行く」は中村融編訳のホラーSFアンソロジーです。出版当時、新刊書店で見つけて跳びついた記憶があります。キャンベル・ジュニア以外には、リチャード・マシスン、ディーン・R・クーンツ、フリッツ・ライバー、フィリップ・K・ディック、ロジャー・ゼラズニー、クラーク・アシュトン・スミス、ジャック・ヴァンス、アルフレッド・ベスター、ブライアン・W・オールディスなど、錚々たる面々が名を連ねています。

 マニアの方は、「銀背じゃねえのかよ !」と思われるかもしれませんが、私はあまり銀背を集めていないんですよね。持っているのはマシスンの「縮み行く人間」と、カート・シオドマクの「ドノヴァンの脳髄」の他には、数冊持っているだけです。青背や白背で出ていると、そっちを買っちゃうんですよね。古本市などで見つけても、結構な値段が付いてたりすると、他の本を優先してしまいますから。

 ホラー好きでSF好きの私にとって、この作品は両方楽しめる素晴らしい作品です。

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