2015年7月9日木曜日

『それはかちり、かちりとちらついて終わる』感想

『それはかちり、かちりとちらついて終わる』
ウィリアム・テン著/中村保男訳
創元推理文庫「ウィリアム・テン短篇集1」所収 初版1973年3月23日

 あらすじ・・・2089年、核ミサイル実験の影響で、植物を死滅させる病原菌が蔓延し、飢餓により人類滅亡の危機が、すぐそこに迫っている世界。マックス・アルベンは、タイムマシンで核ミサイルの発射された1976年に行き、スイッチを切り替えて弾道を変え、歴史を改編する任務を受け出発する。
  2089年、核ミサイル実験の影響で、突然変異したおたふく風邪により、出生率が極端に低くなり、人口減少による人類滅亡の危機が、すぐそこに迫っている世界。マック・アルビンは、タイムマシンで核ミサイルの発射された1976年に行き、スイッチを切り替えて弾道を変え、歴史を改編するため出発する。
 お互いの世界は、せっかく改変した歴史を再び改変されないように手を打つが……。

 タイムマシンによる歴史改編物のSFは沢山ありますが、この作品はその中でも、かなりユニークな作品ではないでしょうか。主人公は名前が微妙に違いますが、違う歴史の同一人物と思われます。主人公が選ばれた理由が、時間移動しても意識を失わない体質である、という理由からもそう推察されます。
 歴史改編の方法が、スイッチを奥に押すか、手前に引くかの二種類しかないのは、物語をシンプルにするためでしょうか。改編後の世界がどうなるのかを知った双方の主人公の反応が面白いと思います。

 作者のウィリアム・テンはイギリスの人。短編を中心に発表しているようです。

 この作品も、山本弘さんの本でタイトルとあらすじを読んで、興味を持ちました。訳者あとがき に、収録作の原題が載っていたのですが、この作品の「It Ends with a Elicker」の”Elicker”の意味が分からず、オンライン翻訳で調べたりしたのですが、結局”Flicker”の誤植と判明し、やはり初版本信仰は間違っていると確信しました。
 それにしてもこの作品で描かれた2089年の世界。どちらか選ぶとしたら、どっちでしょうかねえ(どっちも嫌という選択肢は却下)。悩む。 

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