『トーテム』
デイヴィッド・マレル著/喜多元子訳
ハヤカワ文庫NV(モダンホラーセレクション) 初版1987年4月10日
あらすじ・・・ワイオミング州の平和な田舎町ポッターズ・フィールドで、次々と奇怪な事件が起きる。轢き逃げされたヒッチハイカーの死体が、検死中に動き出す。穴に落ちた男が犬に噛み殺される。アライグマに噛まれた少年が、母親に襲い掛かる。
警察署長のスローターは、検死医のアークム、記者のダンラップ、恋人のマージ等の力を借りて、事件を解決しようとするが、犠牲者は増え続ける。
そして、満月の夜がやって来る。
吸血鬼と狼男物のホラーと、ウィルスパニック物を合わせたようなストーリー。徐々に犠牲者が増えていき、満月の夜にクライマックスをむかえる展開は、スリリングで退屈しません。特に、クライマックスでついに姿を見せる、「枝角」を持つ”やつら”の異様さときたら……。
物語中盤から、事件の真相は想像できると思いますが、序盤から徐々に雰囲気を盛り上げて行って、クライマックスに繋げる展開はお見事です。
作者のデイヴィッド・マレルは、「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」の作者と同じ人です。
実はこの「トーテム」は、もっと長いストーリーだった物を編集者の要求で、短くまとめた物だそうです。後に再版に当たって、原稿を元の形に戻した完全版が出版されました。日本では東京創元社から、上下二分冊で出版されています。
私は完全版の方から先に読んだのですが、短いハヤカワ版も呼んでみたくて古本屋を探し回って購入したのに、ずっとほったらかしにしていたのを先日、部屋の掃除中に発見して一気読みしました(部屋の掃除はまだ終わってません)。両者の最大の違いは、完全版には主要登場人物が一人追加されていることでしょう。内容が濃くなって分量が増えても、詰まる事無くサクサク読めました。
どちらが良いかと聞かれたら、どっちも良いと答えるしかありません。あえて言うなら、ハヤカワ版はあっさりしすぎていて、完全版はやや冗長に感じる、といった所でしょうか。興味を持った方は、ぜひ読み比べてみてください。
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