2015年5月11日月曜日

『オレンジは苦悩、ブルーは狂気』感想

『オレンジは苦悩、ブルーは狂気』
デイヴィッド・マレル著/浅倉久志訳
新潮文庫「ナイト・フライヤー」所収 初版1989年9月25日

 あらすじ・・・謎の死を遂げた画家、ファン・ドールンの秘密を調べていた友人のマイヤーズが、ファン・ドールンと同じように自分の目を抉り出して死んだ。ファン・ドールンの絵に隠された秘密をマイヤーズから教えられていたわたしは、友人の死の真相と、ファン・ドールンの秘密を調べに、ドールンとマイヤーズが死んだ南仏の町ラ・ヴェルジュに向かった。ファン・ドールンの絵には、注意深く観察しなければ分からないが、不気味な小さい顔の群れが描かれていた。だが、ラ・ヴェルジュで待っていたのは、絵よりも不気味で恐ろしい真相だった。

 ダグラス・E・ウィンター編の、ホラーアンソロジー「ナイト・フライヤー」に収録されている短編小説です。
 まず、タイトルに惹かれました。実に意味深なタイトル。意味は本編中で説明されています。
 内容は実に不気味で、絵に秘められた謎も不気味なら、事の真相も不気味。ラストも実に不気味な雰囲気で終わります。読んでいて、自分もブルーに塗り固められそうな気分になりました。

 作者のデイヴィッド・マレルは、日本では映画「ランボー」の原作者としての方が有名でしょうか。アクションやスリラーを得意とする作家ですが、ホラー作家としても一流の腕前を持っている人です。長編は「トーテム」だけですが、短編がこの作品のように、アンソロジーによく収録されています。

「ナイト・フライヤー」には、マレルの他にスティーヴン・キング、デニス・エチスン、クライヴ・バーカー、トマス・テッシアー、ピーター・ストラウブ、チャールズ・L・グラント、ラムジー・キャンベル、ホイットリー・ストリーバーなど、そうそうたるメンバーが名を連ねていますが、マレルのこの「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」が、白眉といっていいでしょう(キングの表題作も負けずに良いのですが)。

 アンソロジーは、いろんな作家の作品が手軽に読めるので、そのジャンルをはじめて読む人には、入門書代わりにちょうど良いと思います。

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