『影が行く』
ジョン・W・キャンベル・ジュニア著/中村融訳
創元SF文庫「ホラーSF傑作選 影が行く」所収 初版2000年8月25日
あらすじ・・・アメリカ南極越冬隊が見つけたのは、氷に封じ込められた醜悪な異星人だった。死んでいると思われたそれは、解凍されると生き返って逃げ出し、犬を襲った。それは犬を取り込み、同化し、複製しようとしていた。それは何でも模倣できる能力を持つ生物だった。さらに、人間の中にもすでに同化された者がいることが分かる。やがて隊員たちは皆、同じ事を考え始める。「おれのとなりにいる男は、人でなしの怪物なのか?」
ジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体X」(1982年)が好きで、その原作として読んでみたかった作品です。読んでみて驚いたのは、カーペンター監督が原作にかなり忠実に映像化していることでした。登場人物も、かなり数が減っていましたが、原作通りの名前で出ています。
外界から閉ざされた空間で、疑心暗鬼に陥りながら、この怪物を退治しようとする登場人物たちの、葛藤と努力がサスペンスフルに描かれた名作です。
作者のジョン・W・キャンベル・ジュニアは、作家としてよりも、「アスタウンディング」誌の編集者として有名な人物です。掲載する作品に高いクォリティーを要求し、SFの水準を引き上げた人物だそうです。彼の下から、アシモフ、ハインライン、ヴァン・ヴォークトらが輩出されました。
「ホラーSF傑作選 影が行く」は中村融編訳のホラーSFアンソロジーです。出版当時、新刊書店で見つけて跳びついた記憶があります。キャンベル・ジュニア以外には、リチャード・マシスン、ディーン・R・クーンツ、フリッツ・ライバー、フィリップ・K・ディック、ロジャー・ゼラズニー、クラーク・アシュトン・スミス、ジャック・ヴァンス、アルフレッド・ベスター、ブライアン・W・オールディスなど、錚々たる面々が名を連ねています。
マニアの方は、「銀背じゃねえのかよ !」と思われるかもしれませんが、私はあまり銀背を集めていないんですよね。持っているのはマシスンの「縮み行く人間」と、カート・シオドマクの「ドノヴァンの脳髄」の他には、数冊持っているだけです。青背や白背で出ていると、そっちを買っちゃうんですよね。古本市などで見つけても、結構な値段が付いてたりすると、他の本を優先してしまいますから。
ホラー好きでSF好きの私にとって、この作品は両方楽しめる素晴らしい作品です。
2015年6月26日金曜日
2015年6月22日月曜日
第23回 弁天町 ORC 200 古本祭り リポート
『第23回 弁天町ORC200 古本祭り』リポート
2015年6月21日、『第23回 弁天町ORC200 古本祭り』に行ってきました。
会場はこんな感じ。
大阪環状線の弁天町駅から、徒歩3分くらいにある「弁天町ORC200」の中の、吹き抜けになっている広場が会場です。やっぱり屋内イベントは、天気の心配が要らないのがいいですね。まあ、今日は晴れてましたが。
日曜日のわりに、人出は少なかったですね。ゆっくり見られて良かったですが。
ここは、総合レジで一括精算する方式で、沢山買う人用に買い物カゴも用意されていました。
古本以外では、古地図、DVD,CD,などがあり、変わったところでは古い銃(フリントロック式?)のレプリカなんかも売ってました。
今回の収穫。やや少なめですね。
SFはこちらの二冊。
E・F・ラッセル著の「わたしは"無"」(創元推理文庫)は、以前感想を書いた「証言」がとても良かったので、作者で買いました。1800円と、ちょっと高め。
ロバート・A・ハインライン著「ウロボロス・サークル」(ハヤカワ文庫SF)は……、すいません。表紙で買いました。まあ、クーンツも本の売り上げを決める重要な要素のひとつとして、表紙を上位に挙げてましたし……、すいません。
ホラーはこの二冊。
大瀧啓祐編「ウィアード」は、アメリカのパルプ雑誌「ウィアード・テイルズ」に掲載された作品を集めたアンソロジーです。ラヴクラフトを始め、フリッツ・ライバー、ロバート・アーヴィン・ハワード、ロバート・ブロック、クラーク・アシュトン・スミス、シーベリイ・クイン、オーガスト・ダーレスなど、お馴染みの名前が見えます。「4」はすでに持っているので、「1」と「5」を探さないと。
その他は、三冊。
奥崎祐司著「項羽・劉邦時代の戦乱」(新人物往来社)は、戦国末期から黄巾の乱あたりまでの戦争についての本です。「中国史叢書」というシリーズで、「三国時代の戦乱」をすでに持っています。
「萌えよ! 戦車学校」シリーズは、「1」と「3」を持っているので、「2」と「4」を買いました。好きなんですよね、戦車。ガルパンも見てるし。決して、表紙の露出度の高い女の子に釣られたわけでは……、すいません。
「弁天町ORC200 古本祭り」は、年に何度か開催されてますので、次もまたリポートすると思います。
2015年6月21日、『第23回 弁天町ORC200 古本祭り』に行ってきました。
会場はこんな感じ。
大阪環状線の弁天町駅から、徒歩3分くらいにある「弁天町ORC200」の中の、吹き抜けになっている広場が会場です。やっぱり屋内イベントは、天気の心配が要らないのがいいですね。まあ、今日は晴れてましたが。
日曜日のわりに、人出は少なかったですね。ゆっくり見られて良かったですが。
ここは、総合レジで一括精算する方式で、沢山買う人用に買い物カゴも用意されていました。
古本以外では、古地図、DVD,CD,などがあり、変わったところでは古い銃(フリントロック式?)のレプリカなんかも売ってました。
今回の収穫。やや少なめですね。
SFはこちらの二冊。
E・F・ラッセル著の「わたしは"無"」(創元推理文庫)は、以前感想を書いた「証言」がとても良かったので、作者で買いました。1800円と、ちょっと高め。
ロバート・A・ハインライン著「ウロボロス・サークル」(ハヤカワ文庫SF)は……、すいません。表紙で買いました。まあ、クーンツも本の売り上げを決める重要な要素のひとつとして、表紙を上位に挙げてましたし……、すいません。
ホラーはこの二冊。
大瀧啓祐編「ウィアード」は、アメリカのパルプ雑誌「ウィアード・テイルズ」に掲載された作品を集めたアンソロジーです。ラヴクラフトを始め、フリッツ・ライバー、ロバート・アーヴィン・ハワード、ロバート・ブロック、クラーク・アシュトン・スミス、シーベリイ・クイン、オーガスト・ダーレスなど、お馴染みの名前が見えます。「4」はすでに持っているので、「1」と「5」を探さないと。
その他は、三冊。
奥崎祐司著「項羽・劉邦時代の戦乱」(新人物往来社)は、戦国末期から黄巾の乱あたりまでの戦争についての本です。「中国史叢書」というシリーズで、「三国時代の戦乱」をすでに持っています。
「萌えよ! 戦車学校」シリーズは、「1」と「3」を持っているので、「2」と「4」を買いました。好きなんですよね、戦車。ガルパンも見てるし。決して、表紙の露出度の高い女の子に釣られたわけでは……、すいません。
「弁天町ORC200 古本祭り」は、年に何度か開催されてますので、次もまたリポートすると思います。
2015年6月12日金曜日
『サイコ』(マイケル・オドナヒュー)感想
『サイコ』
マイケル・オドナヒュー著/浜野アキオ訳
扶桑社ミステリー「ゴーサム・カフェで昼食を 22の異常な愛の物語」所収 初版1996年5月30日
あらすじ・・・二月中旬、サイコは複数の銃を持って部屋を出る。まず、隣の部屋に牛乳を配達しに来た男をショットガンで一発。アパートの外で、ローラースケートを履いた黒人の女子高生を。オフィスビルに入ると、エレベーターの中で、少年と少女を。ビルの屋上から、公園でくつろぐ老夫婦をスコープ付きのライフルで。通報を受けて駆けつけた、男女の警察官を返り討ちに。帰り道にあるペットショップの二羽のウサギをショーウィンドウ越しに連射。一仕事終えたサイコは、自室に帰った。すると、サイコに撃たれたはずの犠牲者たちが、ゆっくりと起き上がり……。
普通の小説ではなく、シナリオ風に書かれた珍しい作品。ロバート・ブロックの同名作品とは関係ありません。なんというか、アイデアの勝利、っていう感じですね。初めは単なるサイコ物かと思わせて、犠牲者が生き返るところで急にホラー色が強くなりますが、それだけでは終わらない。さらにひねった展開が待っています。サイコの正体がまさか「アレ」だとは……。実に良く出来た作品です。
作者のマイケル・オドナヒューは、「サタデー・ナイト・ライヴ」の構成作家だった人で、ビル・マーレーの「3人のゴースト」の脚本を書いた人物だそうです。
「ゴーサム・カフェで昼食を 22の異常な愛の物語」は、マーティン・H・グリーンバーグ、エドワード・E・クレーマー、ナンシー・A・コリンズ編の、愛(恋愛)とホラーについて書かれた短編小説を集めたアンソロジーです。他には、スティーヴン・キング、デイヴィッド・J・ショウ、ラムジー・キャンベル、リチャード・レイモン、キャスリン・プタセク、エド・ゴーマン、ダグラス・E・ウィンターなどの作品が収録されています。
マイケル・オドナヒュー著/浜野アキオ訳
扶桑社ミステリー「ゴーサム・カフェで昼食を 22の異常な愛の物語」所収 初版1996年5月30日
あらすじ・・・二月中旬、サイコは複数の銃を持って部屋を出る。まず、隣の部屋に牛乳を配達しに来た男をショットガンで一発。アパートの外で、ローラースケートを履いた黒人の女子高生を。オフィスビルに入ると、エレベーターの中で、少年と少女を。ビルの屋上から、公園でくつろぐ老夫婦をスコープ付きのライフルで。通報を受けて駆けつけた、男女の警察官を返り討ちに。帰り道にあるペットショップの二羽のウサギをショーウィンドウ越しに連射。一仕事終えたサイコは、自室に帰った。すると、サイコに撃たれたはずの犠牲者たちが、ゆっくりと起き上がり……。
普通の小説ではなく、シナリオ風に書かれた珍しい作品。ロバート・ブロックの同名作品とは関係ありません。なんというか、アイデアの勝利、っていう感じですね。初めは単なるサイコ物かと思わせて、犠牲者が生き返るところで急にホラー色が強くなりますが、それだけでは終わらない。さらにひねった展開が待っています。サイコの正体がまさか「アレ」だとは……。実に良く出来た作品です。
作者のマイケル・オドナヒューは、「サタデー・ナイト・ライヴ」の構成作家だった人で、ビル・マーレーの「3人のゴースト」の脚本を書いた人物だそうです。
「ゴーサム・カフェで昼食を 22の異常な愛の物語」は、マーティン・H・グリーンバーグ、エドワード・E・クレーマー、ナンシー・A・コリンズ編の、愛(恋愛)とホラーについて書かれた短編小説を集めたアンソロジーです。他には、スティーヴン・キング、デイヴィッド・J・ショウ、ラムジー・キャンベル、リチャード・レイモン、キャスリン・プタセク、エド・ゴーマン、ダグラス・E・ウィンターなどの作品が収録されています。
『たんぽぽ娘』感想
『たんぽぽ娘』
ロバート・F・ヤング著/井上一夫訳
創元推理文庫「年刊SF傑作選 2」所収 初版1967年12月29日
あらすじ・・・妻が陪審の義務で呼び出され、二週間の休暇を湖畔の避暑地で一人ぼっちですごさなければいけなくなったマークは、ある日湖のほとりで、たんぽぽ色の髪をした少女に出会った。ジュリーと名乗った二十歳にもなっていないであろう彼女は、自分は未来からタイムマシンでやって来たと言った。
「おとといはウサギを見たし、きのうは鹿、きょうはあなた」
マークは妻に対し罪悪感を抱きながらも、ジュリーに惹かれていった。しかし、ジュリーと別れる日がやって来た。
四十四歳のおっさんと、二十歳にも満たない少女のラブストーリー。リアルに四十代のおっさんが読むと、少し気恥ずかしいですね。「おとといはウサギを見たし、きのうは鹿、きょうはあなた」と言うフレーズが、何度も繰り返し使われているのが効果的です。ジュリーの正体(と言うか誰かの正体がジュリー)は、比較的簡単に推測できますが、ラストは感動できます。何度読んでもいいですね。
この話、以前から評判を聞いていて、ぜひ読みたいと思っていたのですが、
「ビブリア古書堂の事件手帖」にも出ていたコバルト文庫のアンソロジーは手に入らず、ハヤカワのヤングの短編集には収録されておらず、なかなか読む機会に恵まれなかったのですが、昨年のみやこめっせの古書即売会で本書を見つけ(五百円だった!)、ようやく読むことが出来ました。即売会の帰り、立ち寄った書店で河出書房新社版と復刊ドットコム版を見つけ、なんとも言えない気分に……。ともあれ、他人の評判はあてに出来ないものですが、これは評判通りでした。
作者のロバート・F・ヤングは本作のような、ロマンチックなSFを書くことで知られ、本作はその最高傑作と言われています。短編作家のイメージが強く、長編は見たことがありません。翻訳されて無いだけですかね?
「年刊SF傑作選 2」は、ジュディス・メリル編のSFアンソロジーで、1961年に発表されたSF短編を収めています。ヤング以外では、マック・レナルズ、フレデリック・ポール、C・M・コーンブルース、フリッツ・ライバー、コードウェイナー・スミス、ジョン・ウィンダム、レイ・ラッセルなどの作品が収録されています。
最近、河出文庫版を購入しましたが、あえて「年刊SF傑作選 2」で(古本読書感想ブログなので)。
ロバート・F・ヤング著/井上一夫訳
創元推理文庫「年刊SF傑作選 2」所収 初版1967年12月29日
あらすじ・・・妻が陪審の義務で呼び出され、二週間の休暇を湖畔の避暑地で一人ぼっちですごさなければいけなくなったマークは、ある日湖のほとりで、たんぽぽ色の髪をした少女に出会った。ジュリーと名乗った二十歳にもなっていないであろう彼女は、自分は未来からタイムマシンでやって来たと言った。
「おとといはウサギを見たし、きのうは鹿、きょうはあなた」
マークは妻に対し罪悪感を抱きながらも、ジュリーに惹かれていった。しかし、ジュリーと別れる日がやって来た。
四十四歳のおっさんと、二十歳にも満たない少女のラブストーリー。リアルに四十代のおっさんが読むと、少し気恥ずかしいですね。「おとといはウサギを見たし、きのうは鹿、きょうはあなた」と言うフレーズが、何度も繰り返し使われているのが効果的です。ジュリーの正体(と言うか誰かの正体がジュリー)は、比較的簡単に推測できますが、ラストは感動できます。何度読んでもいいですね。
この話、以前から評判を聞いていて、ぜひ読みたいと思っていたのですが、
「ビブリア古書堂の事件手帖」にも出ていたコバルト文庫のアンソロジーは手に入らず、ハヤカワのヤングの短編集には収録されておらず、なかなか読む機会に恵まれなかったのですが、昨年のみやこめっせの古書即売会で本書を見つけ(五百円だった!)、ようやく読むことが出来ました。即売会の帰り、立ち寄った書店で河出書房新社版と復刊ドットコム版を見つけ、なんとも言えない気分に……。ともあれ、他人の評判はあてに出来ないものですが、これは評判通りでした。
作者のロバート・F・ヤングは本作のような、ロマンチックなSFを書くことで知られ、本作はその最高傑作と言われています。短編作家のイメージが強く、長編は見たことがありません。翻訳されて無いだけですかね?
「年刊SF傑作選 2」は、ジュディス・メリル編のSFアンソロジーで、1961年に発表されたSF短編を収めています。ヤング以外では、マック・レナルズ、フレデリック・ポール、C・M・コーンブルース、フリッツ・ライバー、コードウェイナー・スミス、ジョン・ウィンダム、レイ・ラッセルなどの作品が収録されています。
最近、河出文庫版を購入しましたが、あえて「年刊SF傑作選 2」で(古本読書感想ブログなので)。
2015年6月6日土曜日
『証言』感想
『証言』
エリック・フランク・ラッセル著/酒井昭伸訳
河出文庫「20世紀SF 2 1950年代 初めの終わり」所収 初版2000年12月4日
あらすじ・・・世界中が注目する裁判が始まった。プロキオン星系からやって来た地球外生命体「メイス」に対する裁判だ。メイスは地球への亡命を求めていたが、地球へ来た時の状況や行き違いと、その棘で覆われた見るからに危険そうな容姿のせいで、裁判で有罪になれば極刑か、地球外へ追放されることになる。検事は次々に証人を繰り出し、メイスがいかに危険な存在なのかを証明しようとする。弁護士はそれを反対尋問で飄々といなす。裁判は検察側有利で進むが、弁護士には逆転の秘策があった。そして、弁護側の証人の証言が始まる。
異星人と裁判と言うと、以前取り上げた「イリーガル・エイリアン」がありますが、あちらは長編でこちらは短編です。読後感の良さも似ています。
検事の敵意に満ちた裁判の進め方は、憎たらしいですがメイスが無罪を勝ち取るのは難しいように思えました。弁護士の飄々とした態度には、やきもきさせられました。それにしても、それまでの裁判の流れを一気にひっくり返すその手際! そして弁護側の証人の「証言」の、なんと力強いこと!
正直、最後の一節は蛇足に思えましたが、実に面白い作品でした。
作者のエリック・フランク・ラッセルはイギリス人ですが、アメリカの雑誌<アスタウンディング>誌でデヴュー。英国惑星間協会の創立メンバーで、アーサー・C・クラークは後輩にあたるらしいです。
SFは、短編をよく読むのですが、今まで読んだSF短編では、この作品がベストです。
エリック・フランク・ラッセル著/酒井昭伸訳
河出文庫「20世紀SF 2 1950年代 初めの終わり」所収 初版2000年12月4日
あらすじ・・・世界中が注目する裁判が始まった。プロキオン星系からやって来た地球外生命体「メイス」に対する裁判だ。メイスは地球への亡命を求めていたが、地球へ来た時の状況や行き違いと、その棘で覆われた見るからに危険そうな容姿のせいで、裁判で有罪になれば極刑か、地球外へ追放されることになる。検事は次々に証人を繰り出し、メイスがいかに危険な存在なのかを証明しようとする。弁護士はそれを反対尋問で飄々といなす。裁判は検察側有利で進むが、弁護士には逆転の秘策があった。そして、弁護側の証人の証言が始まる。
異星人と裁判と言うと、以前取り上げた「イリーガル・エイリアン」がありますが、あちらは長編でこちらは短編です。読後感の良さも似ています。
検事の敵意に満ちた裁判の進め方は、憎たらしいですがメイスが無罪を勝ち取るのは難しいように思えました。弁護士の飄々とした態度には、やきもきさせられました。それにしても、それまでの裁判の流れを一気にひっくり返すその手際! そして弁護側の証人の「証言」の、なんと力強いこと!
正直、最後の一節は蛇足に思えましたが、実に面白い作品でした。
作者のエリック・フランク・ラッセルはイギリス人ですが、アメリカの雑誌<アスタウンディング>誌でデヴュー。英国惑星間協会の創立メンバーで、アーサー・C・クラークは後輩にあたるらしいです。
SFは、短編をよく読むのですが、今まで読んだSF短編では、この作品がベストです。
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