『廃墟にて』(ネタバレあり)
ロアルド・ダール著/吉田誠一訳
創元推理文庫「年間SF傑作選6」所収 初版1975年3月14日
あらすじ(ネタバレあり)・・・廃墟であった男は、自分の左脚をのこぎりで切っていた。麻酔を射ってているので痛くはないのだという。「少しご入用ですか」問いかける男に私は「ええ、どうかお願いします」と答えた。空腹で気が狂いそうだったのだ。男は医師で次の食事を提供してくれれば分けてくれるという。火を起こして肉を炙っていると、少女がやって来た。「あんたも少し欲しいの?」医師の問いに少女は頷く。「あとでお返ししなくちゃいけないんだよ」医師は言う。「こうして三人そろったのだから、しばらくは生き延びられそうですね」
ページにして2ページ。20行ほどのショートショートですが、並の長編小説より印象が強く残りました。いわゆる「アフターマス」ものです。崩壊した廃墟で出会った3人の短い会話だけの物語ですが、会話の内容を考えると……。無駄な部分をそぎ落として、最小限の文字数で表現された、シンプルで静かなストーリー。それでいて忘れがたい印象を残す作品だと思います。他にも沢山色んな作家の作品が収録されていますが、この話ばかり読み返しています。
作者のロアルド・ダールは、映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作者としてのほうが有名でしょう。いわゆる「奇妙な味」と呼ばれるタイプの作品を多く書いている人です。短編の名手と呼ばれているそうです。
「年間SF傑作選6」はジュディス・メリル編のSFアンソロジーです。先日の「第25回 弁天町 ORC 200 古本祭り」で購入したものです。
ショートショートというとやはり星新一さんを思い浮かべます。小学生の頃よく読んでいました。筒井康隆さんの「笑うな」に収録されていたショートショートも、印象に残っています。ショートショートは無駄がない分、インパクトが有るように思えます。
作品の前にメリルの短い紹介文が載っていますが、それもなかなか面白い文章です。
2016年4月15日金曜日
2016年3月21日月曜日
「第25回 弁天町 ORC 200 古本祭り」リポート
『第25回 弁天町 ORC 200 古本祭り』リポート
2016年3月20日、「第25回 弁天町 ORC 200 古本祭り」に行ってきました。ここのところずっと古本市に行けてなかったので、久々の古本市です。まあ、行けなかった理由は、お金が無かったり、お金が無かったり、お金が無かったりしたからですが……。今回も足を痛めていたので(仕事中、歩いていたら左足のふくらはぎが、”ブチッ”っていった)見送ろうかと思ったのですが、幸い早くに回復したので、行くことにしました。
以前のツイン21の時も感じたのですが、棚の数がやはり減っているようです。参加店舗が減ったのでしょうか? 日曜日の割には、お客さんの入りももう一つでしたし……。ちょっと寂しいですね。
相変わらずレプリカの古式銃が売ってましたが、あれは一体何なんでしょうね。
SFマガジンを二冊。1964年11月号と、1967年10月号です。前者にはレイモンド・F・ジョーンズの「騒音レベル」が、後者にはウォード・ムーアの「ロトの娘」が掲載されています。「騒音レベル」は、山本弘さんの本で知りました。オチまで知っているのですが、一度読んでみたくて購入しました。「ロトの娘」は、前作に当たる「新ロト記」を読んだことがあり、それがなかなか良かったので、続編があると聞き読んでみたいと思っていたところ、今回見つけることができたので購入しました。
「年間SF傑作選6」は、ジュディス・メリル編のSFアンソロジーです。執筆者は、J・G・バラード、R・A・ラファティ、フリッツ・ライバー、トマス・M・ディッシュ、アーサー・C・クラーク、ゴードン・R・ディクスン、ブライアン・W・オールディスなどです。これらSFファンには馴染みの名前に混じって、ホルヘ・ルイス・ボルヘスと、ロアルド・ダールの名前があるのがちょっと変わってますね。ロアルド・ダールの「廃墟にて」という作品が、なんというか、すごいです。
「スクリーンの異形―骸骨城―」は、井上雅彦さんの映画仕立てのホラー連作集です。
久々の古本市でしたが、やっぱりいいですね。どうにも体調や懐具合が悪くて、行けないイベントが多いのですが、出来るだけ参加したいですね。
「第25回 弁天町 ORC 200 古本祭り」は3月24日木曜日まで開催されているので、興味のある方は行ってみられたらどうでしょう。最寄り駅はJR大阪環状線「弁天町駅」です。
次は4月頭のツイン21か、末の四天王寺か、5月のみやこめっせか……。後者の二つは日程が被ってるんですよね……。全部行きたいけど、どれか一つってことになりそうだなぁ……。
2016年3月4日金曜日
『丘に、町が』感想
『丘に、町が』
クライヴ・バーカー著/宮脇孝雄訳
集英社文庫「血の本[Ⅰ]ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車」所収 初版1987年1月25日
あらすじ・・・ミックとジャッドのホモの恋人二人は、ユーゴスラヴィアを旅行中に喧嘩になってしまった。道に迷った二人の乗る車は、ポポラックという名の田舎町に近づいていた。
ポポラックではヴァスラフ・イェロフセクが、中央広場で「巨人」が組み立てられていく様子を見ていた。その「巨人」は、町の住民で出来ていた。住民たちが老若男女問わず、体をベルトで繋ぎ固定して、体のパーツを作り、それを組み合わせて「巨人」をつくり上げるのだ。隣町のポジュエヴォでも同じように「巨人」を作り、二つの町で作った二人の「巨人」を競わせる祝祭が行われようとしているのだ。
だが、ポジュエヴォの「巨人」に問題が起きた。左の脇腹と腰に欠陥があり、その部分の住民に大きな負担がかかっていたのだ。そしてついに破綻が起き、脇腹を構成していた一人が押しつぶされ、連鎖的にポジュエヴォの「巨人」は崩壊していった。
前代未聞の大惨事が起きた。
人間で組み立てられた巨人! それが崩壊して起きる大惨事! 洪水のように押し寄せる大量の血! 読者の想像力を試すかのような描写が連続します。多分、流れる血の量で言えば、この話が本書の中では一番です。
私は「血の本」シリーズで、この話が一番好きです。異常な殺人鬼も、超常的な怪物も出てきませんが、この幻想的な悪夢のような世界は、何度読んでも面白い。
作者のバーカーと収録されている本については、前回書いたので省略します。
クライヴ・バーカー著/宮脇孝雄訳
集英社文庫「血の本[Ⅰ]ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車」所収 初版1987年1月25日
あらすじ・・・ミックとジャッドのホモの恋人二人は、ユーゴスラヴィアを旅行中に喧嘩になってしまった。道に迷った二人の乗る車は、ポポラックという名の田舎町に近づいていた。
ポポラックではヴァスラフ・イェロフセクが、中央広場で「巨人」が組み立てられていく様子を見ていた。その「巨人」は、町の住民で出来ていた。住民たちが老若男女問わず、体をベルトで繋ぎ固定して、体のパーツを作り、それを組み合わせて「巨人」をつくり上げるのだ。隣町のポジュエヴォでも同じように「巨人」を作り、二つの町で作った二人の「巨人」を競わせる祝祭が行われようとしているのだ。
だが、ポジュエヴォの「巨人」に問題が起きた。左の脇腹と腰に欠陥があり、その部分の住民に大きな負担がかかっていたのだ。そしてついに破綻が起き、脇腹を構成していた一人が押しつぶされ、連鎖的にポジュエヴォの「巨人」は崩壊していった。
前代未聞の大惨事が起きた。
人間で組み立てられた巨人! それが崩壊して起きる大惨事! 洪水のように押し寄せる大量の血! 読者の想像力を試すかのような描写が連続します。多分、流れる血の量で言えば、この話が本書の中では一番です。
私は「血の本」シリーズで、この話が一番好きです。異常な殺人鬼も、超常的な怪物も出てきませんが、この幻想的な悪夢のような世界は、何度読んでも面白い。
作者のバーカーと収録されている本については、前回書いたので省略します。
2016年1月29日金曜日
『ミッドナイト・ミートトレイン』感想
『ミッドナイト・ミートトレイン』
クライヴ・バーカー著/宮脇孝雄訳
集英社文庫「血の本[Ⅰ]ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車」所収 初版1987年1月25日
あらすじ・・・レオン・カウフマンは、ニューヨークという街に失望していた。あれ程憧れていた街が、結局はただの街だったと分かったからだ。
”歓楽の都だなんてとんでもない。この街が育むのは、快楽ではなく、死なのだ。”
街の噂は<地下鉄内連続惨殺事件>で持ちきりだった。地下鉄内で、全身の毛を剃られ、つり革に逆さ吊りにされ、食肉加工所の肉のように、丁寧に解体された死体が見つかったのだ。犯人はまだ捕まっていなかった。
マホガニーは、自分の神聖な仕事に誇りを持っていた。この日も地下鉄の駅で、「それ」にふさわしい肉体を持つ獲物を探していた。
残業で遅くなったカウフマンは、乗り込んだ地下鉄の車内で眠ってしまう。目覚めると、隣の車両から布を裂くような音がした。そっと隣の車両を覗いたカウフマンが見たものは、まさに今、犠牲者を解体しようとしているマホガニーの姿だった。
カウフマンは、自分が乗っているのが、真夜中の人肉列車であることに気づいた。
行間から、むせ返るような血の匂いが漂ってきそうな、そんな作品です。殺人鬼が出てくるだけの、サイコホラーはあまり好きでは無いのですが(怪物のような人間が出てくる話より、怪物そのものが出てくるスーパーナチュラルな要素のあるホラーの方が好き)、これは単なるサイコ殺人鬼の話ではなく、もっと壮大な神話的物語です(キングなら大長編を書きそう)。ホラーファンにわかりやすくいうと、名状しがたい宇宙的恐怖を描いた物語です。カウフマンとマホガニーの対決は、あっさりし過ぎな気もいますが、人が死につつある瞬間を主観的に描写した部分は、作者の並々ならない筆力を感じさせます。
作者のクライヴ・バーカーは、イギリス出身のホラー・ファンタジー作家です。最近はファンタジーの方に力を入れているようで、ちょっと残念です。著名な作品には、映画「ヘル・レイザー」の原作小説の「ヘルバウンド・ハート」や、映画「ミディアン」の原作「死都伝説」などがあります。
短編集「血の本」シリーズでデビューし、世界幻想文学大賞と英国幻想文学大賞を受賞しています。「ミッドナイト・ミートトレイン」は、「血の本」シリーズの巻頭を飾る作品です。
「血の本[Ⅰ]ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車」はクライヴ・バーカーのデビュー短編集の第一巻です。収録作の中では掉尾を飾る「丘に、町が」が、個人的にはベストだと思いますが、表題作もタイトルのインパクトと内容から評価が高い作品です。
この本の初版が発売された頃、私は中学生か高校一年生ぐらいだったと思いますが、本屋で見かけてその表紙イラストの不気味さに、手に取るのをためらった記憶があります。
スプラッターホラーと聞くと、それだけで眉をひそめる人もいると思いますが、私は文章なら想像力のフィルターがかけられるので、そのままの映像を見せつけられる映画より、小説のほうがスプラッターホラー向きだと思います。
「ミッドナイト・ミートトレイン」は、日本人監督の手で映画化されているそうですが、私はまだ見ていません。出来はどうなんでしょうかね?
クライヴ・バーカー著/宮脇孝雄訳
集英社文庫「血の本[Ⅰ]ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車」所収 初版1987年1月25日
あらすじ・・・レオン・カウフマンは、ニューヨークという街に失望していた。あれ程憧れていた街が、結局はただの街だったと分かったからだ。
”歓楽の都だなんてとんでもない。この街が育むのは、快楽ではなく、死なのだ。”
街の噂は<地下鉄内連続惨殺事件>で持ちきりだった。地下鉄内で、全身の毛を剃られ、つり革に逆さ吊りにされ、食肉加工所の肉のように、丁寧に解体された死体が見つかったのだ。犯人はまだ捕まっていなかった。
マホガニーは、自分の神聖な仕事に誇りを持っていた。この日も地下鉄の駅で、「それ」にふさわしい肉体を持つ獲物を探していた。
残業で遅くなったカウフマンは、乗り込んだ地下鉄の車内で眠ってしまう。目覚めると、隣の車両から布を裂くような音がした。そっと隣の車両を覗いたカウフマンが見たものは、まさに今、犠牲者を解体しようとしているマホガニーの姿だった。
カウフマンは、自分が乗っているのが、真夜中の人肉列車であることに気づいた。
行間から、むせ返るような血の匂いが漂ってきそうな、そんな作品です。殺人鬼が出てくるだけの、サイコホラーはあまり好きでは無いのですが(怪物のような人間が出てくる話より、怪物そのものが出てくるスーパーナチュラルな要素のあるホラーの方が好き)、これは単なるサイコ殺人鬼の話ではなく、もっと壮大な神話的物語です(キングなら大長編を書きそう)。ホラーファンにわかりやすくいうと、名状しがたい宇宙的恐怖を描いた物語です。カウフマンとマホガニーの対決は、あっさりし過ぎな気もいますが、人が死につつある瞬間を主観的に描写した部分は、作者の並々ならない筆力を感じさせます。
作者のクライヴ・バーカーは、イギリス出身のホラー・ファンタジー作家です。最近はファンタジーの方に力を入れているようで、ちょっと残念です。著名な作品には、映画「ヘル・レイザー」の原作小説の「ヘルバウンド・ハート」や、映画「ミディアン」の原作「死都伝説」などがあります。
短編集「血の本」シリーズでデビューし、世界幻想文学大賞と英国幻想文学大賞を受賞しています。「ミッドナイト・ミートトレイン」は、「血の本」シリーズの巻頭を飾る作品です。
「血の本[Ⅰ]ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車」はクライヴ・バーカーのデビュー短編集の第一巻です。収録作の中では掉尾を飾る「丘に、町が」が、個人的にはベストだと思いますが、表題作もタイトルのインパクトと内容から評価が高い作品です。
この本の初版が発売された頃、私は中学生か高校一年生ぐらいだったと思いますが、本屋で見かけてその表紙イラストの不気味さに、手に取るのをためらった記憶があります。
スプラッターホラーと聞くと、それだけで眉をひそめる人もいると思いますが、私は文章なら想像力のフィルターがかけられるので、そのままの映像を見せつけられる映画より、小説のほうがスプラッターホラー向きだと思います。
「ミッドナイト・ミートトレイン」は、日本人監督の手で映画化されているそうですが、私はまだ見ていません。出来はどうなんでしょうかね?
2016年1月8日金曜日
『刀鍛冶の双眸』感想
『刀鍛冶の双眸』
ゴードン・リンツナー著/白石朗訳
新潮文庫「幽霊世界」所収 初版1994年7月1日
あらすじ・・・刀鍛冶の麻生は、商売敵の老刀鍛冶竹雄を闇討ちしようと、その家に忍び込んでいた。殺そうというのではない。その目を潰し、刀鍛冶としての命を絶とうというのだ。竹雄は麻生が足元にも及ばぬほどの腕前の持ち主で、仕事の殆どは武雄の元に集まるため、麻生の仕事は数えるほどしかなかった。武雄さえいなければ……という思いが、麻生を凶行に走らせた。首尾よく竹雄の目を潰した麻生だったが、数日後竹雄はこの傷が元で死んでしまう。それから麻生の周りで奇怪な現象が起きるようになる。様々なものに、目が、竹雄の鉄のような色の目が、庭石の表面に、味噌汁の中に、煙管の先の火皿から、花魁の股間から、麻生を見つめるのだ……。
読んでる間も、読み終わった今も、感想は「嘘やろ!?」でした。何が「嘘」かって、これ書いたのが「日本人じゃない」ってことがです。 日本人がペンネームでアメリカの本に寄稿したのかと思うほど、内容が「日本」なんです。”時刻ははや、子の刻をなかば……””水無月の雨の音が……””ここは祇園や先斗町といった格式のある……”などなど、アメリカ人の書いた文章とは思えないんですよね。様式は、ほぼ完璧に日本の怪談話になってます。これって、作者がすごい日本マニアなのか、訳者の翻訳センスがすごいのか、どっちなんでしょう? こういう時、英語が読めたら原書で読んでみたいんですけどねぇ……。
作者のゴードン・リンツナーは解説によると、ファンジン<スペース&タイム>誌の編集者だということで……って、職業作家でもないのかこの人! ホント、どういう人なんでしょう? 未訳に「The Oni」とあるのも日本を舞台にしたものでしょうか? 読みたいんですが、誰か翻訳してくれませんかね?
「幽霊世界」はポール・F・オルソン、デイヴィッド・B・シルヴァ編の「幽霊もの」ホラーアンソロジーです。リンツナー以外には、キャスリン・プタセク、チャールズ・デ=リント、チャールズ・L・グラント、ラムジー・キャンベル、ロバート・R・マキャモンなどです。一番はやはり、マキャモンの表題作でしょう。しかし、ホラーファンが一番見逃せない(読み逃せない?)のは、ディーン・R・クーンツによる「あとがき」でしょう。「あとがき」とありますが、内容はむしろクーンツによるホラー論になっています。ホラーファンなら快哉を叫ぶ事間違い無しの、名文になっています。
ゴードン・リンツナー著/白石朗訳
新潮文庫「幽霊世界」所収 初版1994年7月1日
あらすじ・・・刀鍛冶の麻生は、商売敵の老刀鍛冶竹雄を闇討ちしようと、その家に忍び込んでいた。殺そうというのではない。その目を潰し、刀鍛冶としての命を絶とうというのだ。竹雄は麻生が足元にも及ばぬほどの腕前の持ち主で、仕事の殆どは武雄の元に集まるため、麻生の仕事は数えるほどしかなかった。武雄さえいなければ……という思いが、麻生を凶行に走らせた。首尾よく竹雄の目を潰した麻生だったが、数日後竹雄はこの傷が元で死んでしまう。それから麻生の周りで奇怪な現象が起きるようになる。様々なものに、目が、竹雄の鉄のような色の目が、庭石の表面に、味噌汁の中に、煙管の先の火皿から、花魁の股間から、麻生を見つめるのだ……。
読んでる間も、読み終わった今も、感想は「嘘やろ!?」でした。何が「嘘」かって、これ書いたのが「日本人じゃない」ってことがです。 日本人がペンネームでアメリカの本に寄稿したのかと思うほど、内容が「日本」なんです。”時刻ははや、子の刻をなかば……””水無月の雨の音が……””ここは祇園や先斗町といった格式のある……”などなど、アメリカ人の書いた文章とは思えないんですよね。様式は、ほぼ完璧に日本の怪談話になってます。これって、作者がすごい日本マニアなのか、訳者の翻訳センスがすごいのか、どっちなんでしょう? こういう時、英語が読めたら原書で読んでみたいんですけどねぇ……。
作者のゴードン・リンツナーは解説によると、ファンジン<スペース&タイム>誌の編集者だということで……って、職業作家でもないのかこの人! ホント、どういう人なんでしょう? 未訳に「The Oni」とあるのも日本を舞台にしたものでしょうか? 読みたいんですが、誰か翻訳してくれませんかね?
「幽霊世界」はポール・F・オルソン、デイヴィッド・B・シルヴァ編の「幽霊もの」ホラーアンソロジーです。リンツナー以外には、キャスリン・プタセク、チャールズ・デ=リント、チャールズ・L・グラント、ラムジー・キャンベル、ロバート・R・マキャモンなどです。一番はやはり、マキャモンの表題作でしょう。しかし、ホラーファンが一番見逃せない(読み逃せない?)のは、ディーン・R・クーンツによる「あとがき」でしょう。「あとがき」とありますが、内容はむしろクーンツによるホラー論になっています。ホラーファンなら快哉を叫ぶ事間違い無しの、名文になっています。
2016年1月1日金曜日
『<彗星座>復活』感想
『<彗星座>復活』
チェット・ウィリアムスン著/夏来健次訳
創元推理文庫「シルヴァー・スクリーム 上巻」所収 初版2013年11月29日
あらすじ・・・<彗星座ドライヴイン>が閉鎖されると聞いたマイクは、友人のレニーを誘ってドライヴインシアターを買い取った。初日の売上は上々だったが、売上金の中に五十一年の五十セント硬貨があった。五十年代のファッションで決めた、古いマーキュリーに乗った若者たちが払ったものだという。
翌週、マイクがチケット売り場にいると、マーキュリーに乗った若者たちがやって来た。マイクには、その車に見覚えがあった。
「あの車は、昔俺が乗っていた車だ……。乗っている若僧は、あの頃の俺だ!」
だがレニーは否定する。
「何を馬鹿なことを。そんなこと、あるわけ無いだろ」
舞台設定もストーリー展開も完璧にホラー路線なのに、「怖い」というより「切ない」というのが正直な感想でした。特に、レニーがマイクの言うことを否定する理由が、また……。四十過ぎたおっさんにおすすめです。
作者のチェット・ウィリアムスンって、創元推理文庫「999 妖女たち」所収の「<新十二宮クラブ>議事録とヘンリー・ワトスン・フェアファクスの日記よりの抜粋」(長っ!)しか読んだことがなかったので、悪趣味作家かと思ってたんですが、この作品を読んで印象がガラッと変わりましたね。この人の作品をもっと日本に紹介して欲しいです。
「シルヴァー・スクリーム」は、デイヴィッド・J・スカウ(ショウ)編の「映画ホラー」テーマのアンソロジーです。ウィリアムスン以外には、F・ポール・ウィルスン、ロバート・ブロック、レイ・ガートン、クライヴ・バーカー、ジョー・R・ランズデール、ほか多数。上下巻なので、ヴォリューム満点です。上巻ではこの「<彗星座>復活」以外では、F・ポール・ウィルスンの「カット」が良かったです。F・ポール・ウィルスンの、マイケル・マン監督への恨み節が込められてるようで……。
チェット・ウィリアムスン著/夏来健次訳
創元推理文庫「シルヴァー・スクリーム 上巻」所収 初版2013年11月29日
あらすじ・・・<彗星座ドライヴイン>が閉鎖されると聞いたマイクは、友人のレニーを誘ってドライヴインシアターを買い取った。初日の売上は上々だったが、売上金の中に五十一年の五十セント硬貨があった。五十年代のファッションで決めた、古いマーキュリーに乗った若者たちが払ったものだという。
翌週、マイクがチケット売り場にいると、マーキュリーに乗った若者たちがやって来た。マイクには、その車に見覚えがあった。
「あの車は、昔俺が乗っていた車だ……。乗っている若僧は、あの頃の俺だ!」
だがレニーは否定する。
「何を馬鹿なことを。そんなこと、あるわけ無いだろ」
舞台設定もストーリー展開も完璧にホラー路線なのに、「怖い」というより「切ない」というのが正直な感想でした。特に、レニーがマイクの言うことを否定する理由が、また……。四十過ぎたおっさんにおすすめです。
作者のチェット・ウィリアムスンって、創元推理文庫「999 妖女たち」所収の「<新十二宮クラブ>議事録とヘンリー・ワトスン・フェアファクスの日記よりの抜粋」(長っ!)しか読んだことがなかったので、悪趣味作家かと思ってたんですが、この作品を読んで印象がガラッと変わりましたね。この人の作品をもっと日本に紹介して欲しいです。
「シルヴァー・スクリーム」は、デイヴィッド・J・スカウ(ショウ)編の「映画ホラー」テーマのアンソロジーです。ウィリアムスン以外には、F・ポール・ウィルスン、ロバート・ブロック、レイ・ガートン、クライヴ・バーカー、ジョー・R・ランズデール、ほか多数。上下巻なので、ヴォリューム満点です。上巻ではこの「<彗星座>復活」以外では、F・ポール・ウィルスンの「カット」が良かったです。F・ポール・ウィルスンの、マイケル・マン監督への恨み節が込められてるようで……。
2015年12月11日金曜日
『ぶわん・ばっ!』感想
『ぶわん・ばっ!』
シオドア・スタージョン著/大森望訳
河出書房新社「不思議のひと触れ」所収 初版2003年12月30日
あらすじ・・・「一流のバンドでタイコを叩くにはどうすればいいか?」という私の質問に、レッドは昔話で答えてくれた。アマチュア時代、それなりの腕を持っていたレッドは天狗になっていた。演奏の合間に客席で休憩することなどしょっちゅうだった。
その日も客席で休憩していたレッドは、顔見知りで貸し船業の父親の手伝いをしているマニュエルという青年が、自分の代わりにドラムを叩いているのに気づいた。彼の演奏は最高で、バンドのメンバーも今まで聞いたことがない程、素晴らしい演奏をしていた。
ある日、川の中州で行われる、野外ダンスパーティーで演奏することになったレッドは、その場に音楽業界の大物が、新しいドラマーを探しに来ることを知った。しかしバンドのメンバーは、身勝手なレッドよりマニュエルに演奏させようとしていた。そこでレッドは、マニュエルの父親を騙して急用で出かけさせ、彼が船の操縦で手が離せない様にした。計画通りマニュエルはドラムを叩けなかったが、レッドの演奏も散々で大物をがっかりさせた。
パーティーが終わり、皆マニュエルの操縦する船に乗った。すると、船が異様な音を立て始めた。
ぶわん・ばっ・しっしゅ・しーば
ぼわん・ばっ・しっしゅ・しーぼ
マニュエルが船をドラムにして、演奏を始めたのだ。
この話は一見すると、普通の音楽小説のように見えます。しかし、ラスト一行でこの物語が急に、SFに変わるのです。本当に、最後の一行、最後の一文節で。この本には、色々なタイプの短編が収録されていて、どれもいい作品なのですが、この最後の一行の力によって、この話が一番印象に残りました。
シオドア・スタージョンは、アメリカの有名なSF作家で、長編では「人間以上」が日本では有名です。また「あらゆるものの九割はクズである」という、いわゆる「スタージョンの法則」でも知られています。短編作家としても有名で、日本でも多くの短編集が出版されています。
「不思議のひと触れ」は、河出書房新社の「奇想コレクション」の一冊です。他にも様々な作家の「すこし不思議な物語」の名作を作家別に編集したシリーズだそうです。ダン・シモンズの「夜更けのエントロピー」とか、読んでみたいですね。
シオドア・スタージョン著/大森望訳
河出書房新社「不思議のひと触れ」所収 初版2003年12月30日
あらすじ・・・「一流のバンドでタイコを叩くにはどうすればいいか?」という私の質問に、レッドは昔話で答えてくれた。アマチュア時代、それなりの腕を持っていたレッドは天狗になっていた。演奏の合間に客席で休憩することなどしょっちゅうだった。
その日も客席で休憩していたレッドは、顔見知りで貸し船業の父親の手伝いをしているマニュエルという青年が、自分の代わりにドラムを叩いているのに気づいた。彼の演奏は最高で、バンドのメンバーも今まで聞いたことがない程、素晴らしい演奏をしていた。
ある日、川の中州で行われる、野外ダンスパーティーで演奏することになったレッドは、その場に音楽業界の大物が、新しいドラマーを探しに来ることを知った。しかしバンドのメンバーは、身勝手なレッドよりマニュエルに演奏させようとしていた。そこでレッドは、マニュエルの父親を騙して急用で出かけさせ、彼が船の操縦で手が離せない様にした。計画通りマニュエルはドラムを叩けなかったが、レッドの演奏も散々で大物をがっかりさせた。
パーティーが終わり、皆マニュエルの操縦する船に乗った。すると、船が異様な音を立て始めた。
ぶわん・ばっ・しっしゅ・しーば
ぼわん・ばっ・しっしゅ・しーぼ
マニュエルが船をドラムにして、演奏を始めたのだ。
この話は一見すると、普通の音楽小説のように見えます。しかし、ラスト一行でこの物語が急に、SFに変わるのです。本当に、最後の一行、最後の一文節で。この本には、色々なタイプの短編が収録されていて、どれもいい作品なのですが、この最後の一行の力によって、この話が一番印象に残りました。
シオドア・スタージョンは、アメリカの有名なSF作家で、長編では「人間以上」が日本では有名です。また「あらゆるものの九割はクズである」という、いわゆる「スタージョンの法則」でも知られています。短編作家としても有名で、日本でも多くの短編集が出版されています。
「不思議のひと触れ」は、河出書房新社の「奇想コレクション」の一冊です。他にも様々な作家の「すこし不思議な物語」の名作を作家別に編集したシリーズだそうです。ダン・シモンズの「夜更けのエントロピー」とか、読んでみたいですね。
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