『丘に、町が』
クライヴ・バーカー著/宮脇孝雄訳
集英社文庫「血の本[Ⅰ]ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車」所収 初版1987年1月25日
あらすじ・・・ミックとジャッドのホモの恋人二人は、ユーゴスラヴィアを旅行中に喧嘩になってしまった。道に迷った二人の乗る車は、ポポラックという名の田舎町に近づいていた。
ポポラックではヴァスラフ・イェロフセクが、中央広場で「巨人」が組み立てられていく様子を見ていた。その「巨人」は、町の住民で出来ていた。住民たちが老若男女問わず、体をベルトで繋ぎ固定して、体のパーツを作り、それを組み合わせて「巨人」をつくり上げるのだ。隣町のポジュエヴォでも同じように「巨人」を作り、二つの町で作った二人の「巨人」を競わせる祝祭が行われようとしているのだ。
だが、ポジュエヴォの「巨人」に問題が起きた。左の脇腹と腰に欠陥があり、その部分の住民に大きな負担がかかっていたのだ。そしてついに破綻が起き、脇腹を構成していた一人が押しつぶされ、連鎖的にポジュエヴォの「巨人」は崩壊していった。
前代未聞の大惨事が起きた。
人間で組み立てられた巨人! それが崩壊して起きる大惨事! 洪水のように押し寄せる大量の血! 読者の想像力を試すかのような描写が連続します。多分、流れる血の量で言えば、この話が本書の中では一番です。
私は「血の本」シリーズで、この話が一番好きです。異常な殺人鬼も、超常的な怪物も出てきませんが、この幻想的な悪夢のような世界は、何度読んでも面白い。
作者のバーカーと収録されている本については、前回書いたので省略します。
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