2017年10月30日月曜日

『十月のゲーム』感想

『十月のゲーム』
レイ・ブラッドベリ著/仁賀克雄訳
徳間文庫「恐怖のハロウィーン」所収 初版1986年10月15日

 あらすじ・・・ある年のハロウィーン、ミッチは憎むべき妻ルイーズを苦しめようと、思いを巡らせていた。ミッチはどうしても息子が欲しかった。だがルイーズは出産を恐れていた。
 心ならずも妊娠するが、生まれてきたのは息子ではなく、ミッチとは似ても似つかぬ娘だった。黒い肌、瞳、髪のミッチに当てつけるかのように、白い肌とブロンドの髪に青い瞳をしたマリオンをミッチはどうしても愛せなかった。妻との不和は年々積もっていき、ついには殺意を抱くまでになった。だが、殺すだけでは飽き足らない。もっと長く、ルイーズを苦しめなければ……。
 ハロウィーンの日、近所の子供達を家の地下室に集め、ゲームが始まる。暗闇の中、ミッチはまず「魔女は死んだ。これが魔女を殺したナイフだ」と言い、子供たちにナイフを回した。ゲームはこのあと、ニワトリの内蔵を「魔女のはらわた」、スープ用の骨を「魔女の腕」、おはじきを「魔女の目玉」、などと言いながら手に手に回していくはずだった……。

 オチは読めるんですが、ほのめかすだけではっきりと描かないのが「うわぁ……」ってなります。ブラッドベリってこんな話も書くんだ……って思ったんですが、「第二のアッシャー邸」とか、結構ダークな話を書く人でしたね。元々「何かが道をやってくる」のような、ダークファンタジーを得意にしてる人でした。「万華鏡」とか「霧笛」「火星年代記」(第二のアッシャー邸はこれに収録されてます)の印象が強かったのでちょっとびっくりしました。

 作者のレイ・ブラッドベリについては今更紹介するまでもないでしょう。
 代表作は前述の「何かが道をやってくる」「火星年代記」「刺青の男」などでしょうか。SF・ダークファンタジーなどの著作が多数ありますが、個人的には短編作家というイメージが強いですね。数多くの名作をものしている人なので、どの本でも良いのでぜひ読んでいただきたい作家です。
 
「恐怖のハロウィーン」は、アイザック・アシモフ編のハロウィーンテーマのアンソロジーです。他にはエドワード・D・ホック「吸血鬼の日」、アル・サラントニオ「パンプキン・ヘッド」、イーディス・ウォートン「万聖節前夜」、ロバート・F・ヤング「今年の生贄」がおすすめです。
 ホラー、ミステリー、ファンタジーと色んなジャンルの短編がありますが、ホラーやファンタジーに比べると、ミステリーはイマイチでしたね。ミステリーだと、ハロウィーンは舞台設定の一つに過ぎなくなるので、ハロウィーンそのものを描けるホラーやファンタジーほど、印象的な作品にはならなかったのでしょうか。
 この本の白眉はイーディス・ウォートンの「万聖節前夜」でしょう。物語の中では特に何も起きていないのに、異様に怖い。最後にほのめかされる真相はちょっとありがちな感じですが、ヒロインが一人屋敷を彷徨う場面の緊迫感がすごいです。

 10月31日はハロウィーンということで、それに合わせて投稿してみました。古代人の間では、一日は日没から始まると考えられていたそうで、クリスマスは12月25日ではなく12月24日の日没から始まるので、12月24日はクリスマス・イヴなのです。11月1日の万聖節は前日の日没から始まるので、10月31日は「万聖節前夜」すなわちハロウィーンなのだそうです。10月31日には、もう一度この本を読み返してみようと思います。
 

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