『十月のゲーム』
レイ・ブラッドベリ著/仁賀克雄訳
徳間文庫「恐怖のハロウィーン」所収 初版1986年10月15日
あらすじ・・・ある年のハロウィーン、ミッチは憎むべき妻ルイーズを苦しめようと、思いを巡らせていた。ミッチはどうしても息子が欲しかった。だがルイーズは出産を恐れていた。
心ならずも妊娠するが、生まれてきたのは息子ではなく、ミッチとは似ても似つかぬ娘だった。黒い肌、瞳、髪のミッチに当てつけるかのように、白い肌とブロンドの髪に青い瞳をしたマリオンをミッチはどうしても愛せなかった。妻との不和は年々積もっていき、ついには殺意を抱くまでになった。だが、殺すだけでは飽き足らない。もっと長く、ルイーズを苦しめなければ……。
ハロウィーンの日、近所の子供達を家の地下室に集め、ゲームが始まる。暗闇の中、ミッチはまず「魔女は死んだ。これが魔女を殺したナイフだ」と言い、子供たちにナイフを回した。ゲームはこのあと、ニワトリの内蔵を「魔女のはらわた」、スープ用の骨を「魔女の腕」、おはじきを「魔女の目玉」、などと言いながら手に手に回していくはずだった……。
オチは読めるんですが、ほのめかすだけではっきりと描かないのが「うわぁ……」ってなります。ブラッドベリってこんな話も書くんだ……って思ったんですが、「第二のアッシャー邸」とか、結構ダークな話を書く人でしたね。元々「何かが道をやってくる」のような、ダークファンタジーを得意にしてる人でした。「万華鏡」とか「霧笛」「火星年代記」(第二のアッシャー邸はこれに収録されてます)の印象が強かったのでちょっとびっくりしました。
作者のレイ・ブラッドベリについては今更紹介するまでもないでしょう。
代表作は前述の「何かが道をやってくる」「火星年代記」「刺青の男」などでしょうか。SF・ダークファンタジーなどの著作が多数ありますが、個人的には短編作家というイメージが強いですね。数多くの名作をものしている人なので、どの本でも良いのでぜひ読んでいただきたい作家です。
「恐怖のハロウィーン」は、アイザック・アシモフ編のハロウィーンテーマのアンソロジーです。他にはエドワード・D・ホック「吸血鬼の日」、アル・サラントニオ「パンプキン・ヘッド」、イーディス・ウォートン「万聖節前夜」、ロバート・F・ヤング「今年の生贄」がおすすめです。
ホラー、ミステリー、ファンタジーと色んなジャンルの短編がありますが、ホラーやファンタジーに比べると、ミステリーはイマイチでしたね。ミステリーだと、ハロウィーンは舞台設定の一つに過ぎなくなるので、ハロウィーンそのものを描けるホラーやファンタジーほど、印象的な作品にはならなかったのでしょうか。
この本の白眉はイーディス・ウォートンの「万聖節前夜」でしょう。物語の中では特に何も起きていないのに、異様に怖い。最後にほのめかされる真相はちょっとありがちな感じですが、ヒロインが一人屋敷を彷徨う場面の緊迫感がすごいです。
10月31日はハロウィーンということで、それに合わせて投稿してみました。古代人の間では、一日は日没から始まると考えられていたそうで、クリスマスは12月25日ではなく12月24日の日没から始まるので、12月24日はクリスマス・イヴなのです。11月1日の万聖節は前日の日没から始まるので、10月31日は「万聖節前夜」すなわちハロウィーンなのだそうです。10月31日には、もう一度この本を読み返してみようと思います。
2017年10月30日月曜日
2017年8月14日月曜日
第30回下鴨納涼古本まつり
『第30回下鴨納涼古本まつり』リポート
2017年8月13日、京都下鴨神社で開催されている、第30回下鴨納涼古本まつりに行ってきました。
今回はなぜか、看板がありませんでした。去年の場所にも無かったような……。
日曜日ということもあってか、なかなかの人出。
今日は曇りがちで日差しも弱く、糺の森の木陰のおかげで、意外に暑くなかったです。
参加店の数は、去年と同じくらい?
会場の直ぐ側の森。
「瀬見の小川」の近くは、空気もひんやりしてました。今年初めて鯉が泳いでいることに気づきました。
出掛けたあとで、サングラスと虫除けを忘れたことに気づきました。曇っていたのでサングラスはいらなかったんですが、夏の古本市は虫除けが必需品。蚊取り線香を焚いている店もありますが、基本は自己防衛。虫除けリングや、携帯式虫除けを持っている人が多かったです。
今回の戦利品はこちら。SF5冊、ホラー4冊。
SFマガジンは1970年7月号。トム・ゴドウィン「発明の母」、ダニエル・F・ガロイ「おとり」が収録されている号。
「輪廻の蛇」(ハヤカワ文庫SF)は、ロバート・A・ハインラインの短編集。「かれら」と言う作品が読みたかった。
「分解された男」(創元推理文庫)は、アルフレッド・ベスターのヒューゴー賞受賞作。
「ピー・アイ・マン」(創元推理文庫)も、アルフレッド・ベスターの短編集。
「年間SF傑作選5」(創元推理文庫)は、ジュディス・メリル編のSFアンソロジー。キット・リードの「オートマチックの虎」という作品のタイトルが気になって購入しました。
「カルト映画館*ホラー」(現代教養文庫)は、永田よしのり編のカルト映画のガイドブック的なもの。
「恐怖のハロウィーン」(徳間文庫)は、アイザック・アシモフ編の「ハロウィーン」テーマのアンソロジーです。
「妖魔の宴 ドラキュラ編2」(竹書房文庫)は菊地秀行監修の「ドラキュラ」アンソロジー。
「サンテリア」(創元推理文庫)は、ニコラス・コンデ著のホラー小説。ヴードゥ教がテーマらしい。
今年は曇っていたので雨の心配もしたのですが、降られることもなく、暑さもそれほどでもなかったので良かったです。
バスはやっぱり混むので、タクシーの利用を本気で考えています。
下鴨納涼古本まつりは、16日の水曜日まで開催されているので、興味のある方は行ってみられたらどうでしょうか。……バスは混みますが……。
2017年8月13日、京都下鴨神社で開催されている、第30回下鴨納涼古本まつりに行ってきました。
今回はなぜか、看板がありませんでした。去年の場所にも無かったような……。
日曜日ということもあってか、なかなかの人出。
今日は曇りがちで日差しも弱く、糺の森の木陰のおかげで、意外に暑くなかったです。
参加店の数は、去年と同じくらい?
会場の直ぐ側の森。
「瀬見の小川」の近くは、空気もひんやりしてました。今年初めて鯉が泳いでいることに気づきました。
出掛けたあとで、サングラスと虫除けを忘れたことに気づきました。曇っていたのでサングラスはいらなかったんですが、夏の古本市は虫除けが必需品。蚊取り線香を焚いている店もありますが、基本は自己防衛。虫除けリングや、携帯式虫除けを持っている人が多かったです。
今回の戦利品はこちら。SF5冊、ホラー4冊。
SFマガジンは1970年7月号。トム・ゴドウィン「発明の母」、ダニエル・F・ガロイ「おとり」が収録されている号。
「輪廻の蛇」(ハヤカワ文庫SF)は、ロバート・A・ハインラインの短編集。「かれら」と言う作品が読みたかった。
「分解された男」(創元推理文庫)は、アルフレッド・ベスターのヒューゴー賞受賞作。
「ピー・アイ・マン」(創元推理文庫)も、アルフレッド・ベスターの短編集。
「年間SF傑作選5」(創元推理文庫)は、ジュディス・メリル編のSFアンソロジー。キット・リードの「オートマチックの虎」という作品のタイトルが気になって購入しました。
「カルト映画館*ホラー」(現代教養文庫)は、永田よしのり編のカルト映画のガイドブック的なもの。
「恐怖のハロウィーン」(徳間文庫)は、アイザック・アシモフ編の「ハロウィーン」テーマのアンソロジーです。
「妖魔の宴 ドラキュラ編2」(竹書房文庫)は菊地秀行監修の「ドラキュラ」アンソロジー。
「サンテリア」(創元推理文庫)は、ニコラス・コンデ著のホラー小説。ヴードゥ教がテーマらしい。
今年は曇っていたので雨の心配もしたのですが、降られることもなく、暑さもそれほどでもなかったので良かったです。
バスはやっぱり混むので、タクシーの利用を本気で考えています。
下鴨納涼古本まつりは、16日の水曜日まで開催されているので、興味のある方は行ってみられたらどうでしょうか。……バスは混みますが……。
2017年8月11日金曜日
『まったく、何でも知ってるエイリアン』感想
『まったく、何でも知ってるエイリアン』
ジョージ・アレック・エフィンジャー著/黒丸尚訳
早川書房SFマガジン1985年4月号収録
あらすじ・・・アメリカ合衆国大統領である「私」のもとに、国務長官から「エイリアンが来ました」との報告が来た。 ヌープと名乗る彼らは友好的で、様々なアドヴァイスをくれた。星間航行を可能にした彼らの高度な技術を得ようと地球人たちも友好的に接するが、ヌープたちには一つ欠点があった。あまりにも、おせっかいすぎるのだ……。
……これも一種の「侵略ものSF」になるんでしょうか? ヌープにはそんな気はないのでしょうが……。
ベートーベンの最高傑作は「第九」ではなく「ピアノ協奏曲第五番変ホ長調」。それすらも最高ではなく、人類の最高傑作は「映画ベン・ハーの音楽」。最も美しい花は「タチアオイ」。最高のアメリカ大統領は「ジェームズ・K・ポーク」。こんな具合に意見を押し付けられ、最高の投資先、料理に合うワイン、付き合っている二人の女性どちらと結婚すべきか、などなど……様々な「アドヴァイス」をされれば、たとえ友好的なエイリアンでも鬱陶しくなるでしょう。
ラストもほのぼのしてるのか皮肉なのか、ちょっと変わった読後感でした。
作者のジョージ・アレック・エフィンジャーは1947年生まれのアメリカ人作家です。代表作は『重力が衰えるとき』(ハヤカワ文庫SF)でしょうか。ハードボイルドな作風というイメージがあったので、この作品は意外な印象でした。
8月11日から下鴨納涼古本まつりが始まります。13日に行く予定(雨が降ったら断念)ですので、またSFマガジンを探してみるつもりです。
ジョージ・アレック・エフィンジャー著/黒丸尚訳
早川書房SFマガジン1985年4月号収録
あらすじ・・・アメリカ合衆国大統領である「私」のもとに、国務長官から「エイリアンが来ました」との報告が来た。 ヌープと名乗る彼らは友好的で、様々なアドヴァイスをくれた。星間航行を可能にした彼らの高度な技術を得ようと地球人たちも友好的に接するが、ヌープたちには一つ欠点があった。あまりにも、おせっかいすぎるのだ……。
……これも一種の「侵略ものSF」になるんでしょうか? ヌープにはそんな気はないのでしょうが……。
ベートーベンの最高傑作は「第九」ではなく「ピアノ協奏曲第五番変ホ長調」。それすらも最高ではなく、人類の最高傑作は「映画ベン・ハーの音楽」。最も美しい花は「タチアオイ」。最高のアメリカ大統領は「ジェームズ・K・ポーク」。こんな具合に意見を押し付けられ、最高の投資先、料理に合うワイン、付き合っている二人の女性どちらと結婚すべきか、などなど……様々な「アドヴァイス」をされれば、たとえ友好的なエイリアンでも鬱陶しくなるでしょう。
ラストもほのぼのしてるのか皮肉なのか、ちょっと変わった読後感でした。
作者のジョージ・アレック・エフィンジャーは1947年生まれのアメリカ人作家です。代表作は『重力が衰えるとき』(ハヤカワ文庫SF)でしょうか。ハードボイルドな作風というイメージがあったので、この作品は意外な印象でした。
8月11日から下鴨納涼古本まつりが始まります。13日に行く予定(雨が降ったら断念)ですので、またSFマガジンを探してみるつもりです。
2017年5月5日金曜日
第35回 春の古書大即売会
『第35回 春の古書大即売会』リポート
2017年5月4日、京都市勧業館「みやこめっせ」で開催中の「第35回 春の古本大即売会」に行ってきました。
今年は時間と予算の都合で春の四天王寺は諦めました。
屋内イベントなので、天気の心配がいらないのは良いですね。
この時期の京都は、とにかくすごい人出です。バスは特に混むので、京都に行こうと思っている人は、気をつけたほうが良いでしょう。
今年も弓道の大会が開かれていたようで、和服で弓を持った人がたくさんいました。
会場はかなり広くて、一通り見て回るのに一時間くらいかかりました。今年も外国人の方を何人か見かけました。京都コーナーもあって、京都に関する本が並べられていました。
今回の戦利品。ファンタジー4冊、SF2冊、その他3冊。ホラーが、ホラーが全然ない……。
「ハロルド・シェイ」シリーズ(ハヤカワ文庫FT)は、L・スプレイグ・ディ・キャンプとフレッチャー・プラット共著のアンチ・ヒーローファンタジー。
ジョン・ウィンダム著「地衣騒動」(ハヤカワSFシリーズ)は、作者で選びました。ハヤカワのジョン・ウィンダムでは、これはまだ文庫化されていなんじゃないでしょうか(私が見ていないだけかもしれませんが)?
「びっくりユーモアSF大全集」(奇想天外社)は、SF雑誌「奇想天外」の別冊。ウィリアム・テン、ロバート・シェクリー、ロバート・シルヴァーバーグ、キース・ローマー、ボブ・ショウ、ノーマン・スピンラッドなどのユーモアSF短編が掲載されています。ボブ・ショウの「カクテル・パーティー効果」とか聞いたことがあります。
「史上最強の勇士たち フランス外人部隊」(原書房)は、デイヴィッド・ジョーダン著のフランス外人部隊の本。
「イラク自衛隊「戦闘記」」(講談社)は、イラク先遣隊長だった佐藤正久さんの本。
「チムール帝国紀行」(桃源社)は、クラヴィホ著のチムール(ティムール)帝国旅行記。東西交渉旅行記全集の第三巻。他のも読んでみたいです。
久々の古本市で楽しかったのですが、帰りのバスがとにかくすごい混んでいて、大変でした。本数も少ないので(みやこめっせ前のバス停からは、30分に一台くらい)来年はいっそタクシーにしようかな……。
2017年5月4日、京都市勧業館「みやこめっせ」で開催中の「第35回 春の古本大即売会」に行ってきました。
今年は時間と予算の都合で春の四天王寺は諦めました。
屋内イベントなので、天気の心配がいらないのは良いですね。
この時期の京都は、とにかくすごい人出です。バスは特に混むので、京都に行こうと思っている人は、気をつけたほうが良いでしょう。
今年も弓道の大会が開かれていたようで、和服で弓を持った人がたくさんいました。
会場はかなり広くて、一通り見て回るのに一時間くらいかかりました。今年も外国人の方を何人か見かけました。京都コーナーもあって、京都に関する本が並べられていました。
今回の戦利品。ファンタジー4冊、SF2冊、その他3冊。ホラーが、ホラーが全然ない……。
「ハロルド・シェイ」シリーズ(ハヤカワ文庫FT)は、L・スプレイグ・ディ・キャンプとフレッチャー・プラット共著のアンチ・ヒーローファンタジー。
ジョン・ウィンダム著「地衣騒動」(ハヤカワSFシリーズ)は、作者で選びました。ハヤカワのジョン・ウィンダムでは、これはまだ文庫化されていなんじゃないでしょうか(私が見ていないだけかもしれませんが)?
「びっくりユーモアSF大全集」(奇想天外社)は、SF雑誌「奇想天外」の別冊。ウィリアム・テン、ロバート・シェクリー、ロバート・シルヴァーバーグ、キース・ローマー、ボブ・ショウ、ノーマン・スピンラッドなどのユーモアSF短編が掲載されています。ボブ・ショウの「カクテル・パーティー効果」とか聞いたことがあります。
「史上最強の勇士たち フランス外人部隊」(原書房)は、デイヴィッド・ジョーダン著のフランス外人部隊の本。
「イラク自衛隊「戦闘記」」(講談社)は、イラク先遣隊長だった佐藤正久さんの本。
「チムール帝国紀行」(桃源社)は、クラヴィホ著のチムール(ティムール)帝国旅行記。東西交渉旅行記全集の第三巻。他のも読んでみたいです。
久々の古本市で楽しかったのですが、帰りのバスがとにかくすごい混んでいて、大変でした。本数も少ないので(みやこめっせ前のバス停からは、30分に一台くらい)来年はいっそタクシーにしようかな……。
2017年4月14日金曜日
『美味球身』感想
『美味球身』
ラリー・アイゼンバーグ著/浅倉久志訳
講談社文庫「世界ユーモアSF傑作選1」 初版1980年3月15日
あらすじ……ダックワースが開発した「DMM」は、一度食べたら病みつきになるほどの美味だが、超高カロリーで人間を丸い脂肪の塊に変えてしまうものだった。しかし、「DMM」に催淫剤としての効果があることがわかると、爆発的な勢いで全世界に広まった。
「DMM」には、もう一つ、特殊な効用があって……。
ショートショートですが、なかなか面白い作品だと思いました。オチの後、世界がどうなったのか考えると……。
一つ気になったのが、作中で世界で唯一「DMM」に損なわれなかった国として、引用すると「合衆国が爆撃で石器時代にまで押し戻そうとしたこの小さな国」って、日本のことですかね? 作品が発表されたのはベトナム戦争の前後なので「永久的な飢餓の一歩手前まで痩せほそった国民」「占領軍を、海へ追い落とした」と言う描写から、日本のことだと思うのですが……。
作者のラリー・アイゼンバーグは、生体臨床医学のエレクトロニクス技術者だそうです。その他のことはよく分かりません。短編が二、三本翻訳されているようです。
「世界ユーモアSF傑作選1」は、講談社文庫から出版されている「ユーモアSFアンソロジー」です。他にはチャド・オリバー、チャールズ・ボーモント、エドモンド・ハミルトン、ウィリアム・テン、ロバート・ブロック、ゴードン・R・ディクスン、ロバート・シェクリー、ノーマン・スピンラッド、アラン・E・ナース、フィリップ・ホセ・ファーマー、ジェームズ・E・ガンなどの作品が収録されています。
時間SFのタブーを無視しまくった、ウィリアム・テンの「おれと自分と私と」や、今や現実に起こり得るような時代になった、ゴードン・R・ディクスンの「コンピューターは問い返さない」なんかが面白かったです。
「世界ユーモアSF傑作選1」には、「世界ユーモアSF傑作選2」という続巻があります。
ラリー・アイゼンバーグ著/浅倉久志訳
講談社文庫「世界ユーモアSF傑作選1」 初版1980年3月15日
あらすじ……ダックワースが開発した「DMM」は、一度食べたら病みつきになるほどの美味だが、超高カロリーで人間を丸い脂肪の塊に変えてしまうものだった。しかし、「DMM」に催淫剤としての効果があることがわかると、爆発的な勢いで全世界に広まった。
「DMM」には、もう一つ、特殊な効用があって……。
ショートショートですが、なかなか面白い作品だと思いました。オチの後、世界がどうなったのか考えると……。
一つ気になったのが、作中で世界で唯一「DMM」に損なわれなかった国として、引用すると「合衆国が爆撃で石器時代にまで押し戻そうとしたこの小さな国」って、日本のことですかね? 作品が発表されたのはベトナム戦争の前後なので「永久的な飢餓の一歩手前まで痩せほそった国民」「占領軍を、海へ追い落とした」と言う描写から、日本のことだと思うのですが……。
作者のラリー・アイゼンバーグは、生体臨床医学のエレクトロニクス技術者だそうです。その他のことはよく分かりません。短編が二、三本翻訳されているようです。
「世界ユーモアSF傑作選1」は、講談社文庫から出版されている「ユーモアSFアンソロジー」です。他にはチャド・オリバー、チャールズ・ボーモント、エドモンド・ハミルトン、ウィリアム・テン、ロバート・ブロック、ゴードン・R・ディクスン、ロバート・シェクリー、ノーマン・スピンラッド、アラン・E・ナース、フィリップ・ホセ・ファーマー、ジェームズ・E・ガンなどの作品が収録されています。
時間SFのタブーを無視しまくった、ウィリアム・テンの「おれと自分と私と」や、今や現実に起こり得るような時代になった、ゴードン・R・ディクスンの「コンピューターは問い返さない」なんかが面白かったです。
「世界ユーモアSF傑作選1」には、「世界ユーモアSF傑作選2」という続巻があります。
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