2017年4月14日金曜日

『美味球身』感想

『美味球身』
ラリー・アイゼンバーグ著/浅倉久志訳
講談社文庫「世界ユーモアSF傑作選1」 初版1980年3月15日

 あらすじ……ダックワースが開発した「DMM」は、一度食べたら病みつきになるほどの美味だが、超高カロリーで人間を丸い脂肪の塊に変えてしまうものだった。しかし、「DMM」に催淫剤としての効果があることがわかると、爆発的な勢いで全世界に広まった。
「DMM」には、もう一つ、特殊な効用があって……。

 ショートショートですが、なかなか面白い作品だと思いました。オチの後、世界がどうなったのか考えると……。
 一つ気になったのが、作中で世界で唯一「DMM」に損なわれなかった国として、引用すると「合衆国が爆撃で石器時代にまで押し戻そうとしたこの小さな国」って、日本のことですかね? 作品が発表されたのはベトナム戦争の前後なので「永久的な飢餓の一歩手前まで痩せほそった国民」「占領軍を、海へ追い落とした」と言う描写から、日本のことだと思うのですが……。

 作者のラリー・アイゼンバーグは、生体臨床医学のエレクトロニクス技術者だそうです。その他のことはよく分かりません。短編が二、三本翻訳されているようです。

 「世界ユーモアSF傑作選1」は、講談社文庫から出版されている「ユーモアSFアンソロジー」です。他にはチャド・オリバー、チャールズ・ボーモント、エドモンド・ハミルトン、ウィリアム・テン、ロバート・ブロック、ゴードン・R・ディクスン、ロバート・シェクリー、ノーマン・スピンラッド、アラン・E・ナース、フィリップ・ホセ・ファーマー、ジェームズ・E・ガンなどの作品が収録されています。
 時間SFのタブーを無視しまくった、ウィリアム・テンの「おれと自分と私と」や、今や現実に起こり得るような時代になった、ゴードン・R・ディクスンの「コンピューターは問い返さない」なんかが面白かったです。
 
「世界ユーモアSF傑作選1」には、「世界ユーモアSF傑作選2」という続巻があります。
 

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