『ずっとお城で暮らしてる』
シャーリー・ジャクスン著/市田泉訳
創元推理文庫 初版2007年8月24日
あらすじ・・・メアリ・キャサリン(メリキャット)・ブラックウッドは、姉のコンスタンス(コニー)と伯父のジュリアンの3人で屋敷に住んでいる。この家ではかつて、メリキャットの両親、弟、伯母が毒殺される事件が起きていた。姉のコニーが犯人と疑われたが、裁判の結果無罪となった。
村の住人たちはコニーが犯人と決めつけ、ブラックウッド家に悪意を持っていた。子どもたちは歌う。
”メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん”
”とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット”
”メリキャット おやすみなさいと コニー姉さん”
”深さ十フィートの お墓の中で!”
それでもメリキャットは姉をかばい、伯父の世話をして狂気に囚われながらも、平和に過ごしていた。従兄のチャールズが来訪するまでは……。
なんか、読んでいて混乱してしまう話です。登場人物の狂気が、読者である私に感染するみたいに。メリキャットに向けられる村人の悪意には、吐き気すら覚えます。まともな人間がほとんど登場しないんですよね。
それでも、メリキャットに感情移入して読んでいたら、伯父の一言ですべてが崩れ去ってしまいます。ネタバレを防ぐため詳しくは書きませんが、「メリキャットって、何者なんだ?!」ってかんじです。まあ、伯父もまともな精神状態ではないので、頭から信じることはできませんが。
とにかく、悪意と狂気に酔いそうな作品です。
作者のシャーリー・ジャクスンは、アメリカの女性作家で短編「くじ」(これも、たいがいきっついはなしです。)や長編「山荘綺談」(「たたり」「ホーンティング」のタイトルで映画化されています。)で有名です。人間の悪意や狂気を描かせたら、右に出る人はいないんじゃないですかね? 「魔女」の異名は伊達じゃありません。
以前、創元推理文庫で「はじめて読むならこの一冊」というキャンペーンをやっていて、ジャクスンはこの「ずっとお城で暮らしてる」が選ばれていたんですが、はじめて読むジャクスンがこれって……。まあ「くじ」よりはいいか……。
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