2016年5月31日火曜日

『生きどまり』感想

『生きどまり』
ロバート・ブロック著/仁賀克雄訳
ハヤカワ文庫NV「切り裂きジャックはあなたの友」所収 初版1979年9月30日

 あらすじ・・・ノーベル賞の科学部門を受賞したハーバート・ゼインは、私生活では妻を憎悪するほど結婚生活は破綻していた。ハーバートは妻との生活に背を向け、研究に没頭した。そしてついに彼は、不死の霊薬を完成させた。これさえあれば、永遠に生き続けることができる。しかし、その薬のことを妻に知られてしまった。自分も飲んで不死になろうとする妻をハーバートは殺してしまう。

 タイトルは、誤字ではありません。原題も”The Living End"で、Dead End(行き止まり)をもじったものになっています。訳者のセンスが光っていますね。タイトルの意味はオチを読めばわかります。確かに不死者といえど、超人ではないのですからこのオチはまさに『生きどまり』です。

 作者のロバート・ブロックは、1935年に17歳でデビューした、アメリカのホラー作家です。ハワード・フィリップス・ラブクラフトと仲が良く、彼の存命中はいわゆる「クトゥルー神話」物 を多く書いていましたが、一番有名なのは、アルフレッド・ヒッチコック監督により映画化された「サイコ」でしょう。もっとも日本では、ヒッチコックの名前が有名すぎて、原作者がブロックだということを知る人は少ないかもしれません。

「切り裂きジャックはあなたの友」は仁賀克雄編訳のホラー短編集です。ブロックの短編を新旧交えて収録しています(「生きどまり」は1963年の作)。表題作は切り裂きジャックが今も生きていて、アメリカで殺人を続けているという話でオチは読めるのですが、そこまでグイグイ読者を引っ張っていくのは、流石ブロックといったところです。

0 件のコメント: