2015年8月28日金曜日

『魔性の猫』感想

『魔性の猫』
スティーブン・キング著/白石朗訳
扶桑社ミステリー「魔法の猫」所収 初版1998年2月28日

 あらすじ・・・殺し屋のホルストンは、製薬会社を営む富豪ドローガンから、奇妙な依頼を受ける。殺すのは、一匹の猫。ドローガンはこの猫が、彼の家族3人を殺したのだという。ドローガンの会社では、薬の開発のため1万5千匹の猫を「消費」していた。この猫は、その復讐に来たのだという。事情を聞き、戸惑いながらも依頼を受けたホルストンは、ドローガンの望みどうり彼の屋敷の外で殺すため、猫を二重のショッピングバッグに入れて車で出発した。だが、車の走行中に猫がバッグを抜け出し、ホルストンの視界を塞いだ。コントロールを失った車は衝突し横転。事故のショックで一時的に腕が麻痺したホルストンに、猫が襲いかかった。

  猫好き必読!! 嘘です。猫好きは読まないほうがいいかもしれません。それほどこの猫は、怖いです。殺し屋対猫。普通ギャグにしかならない題材をキングは見事な悪夢に仕上げています。

 作者のスティーブン・キングについては、有名すぎるので今更説明する必要は、無いでしょう。もっとも、私はキングの長編は「シャイニング」しか読んだことがなく、もっぱら短編を読んでいます。キングといえば、話が長ければ長いほど面白いと言われていますが、短編もなかなか面白いと思います。

「魔法の猫」は扶桑社ミステリーから出版された、J・ダン、G・ドゾワ編の「猫」アンソロジーです。猫をテーマにした短編が、多数収録されています。キングの他には、フリッツ・ライバー、コードウェイナー・スミス、アーシュラ・K・ル・グイン、ジーン・ウルフなどが執筆しています。私はまだ全部読んでいないのですが、読んだ中ではライバーの「跳躍者の時空」が良かったです。こっちは本当に猫好き必読です。

2015年8月14日金曜日

第28回 下鴨納涼古本まつり リポート

『第28回 下鴨納涼古本まつり』リポート

 2015年8月13日、『第28回 下鴨納涼古本まつり』に行ってきました。
 生憎天気は愚図つきがちでしたが、私がいた2時間ほどは雨も止んで、太陽が顔を覗かせることもありました。
 会場は下鴨神社にある糺ノ森の馬場です。よくニュースで流鏑馬なんかをしているところだと思います。その馬場の両側に38もの古書店が、テントを張って出店していました。
 休憩のための長椅子があちこちに置かれていて、本探しの合間に腰掛けて休むこともできます。ゴミ箱も設置されていて、清潔な会場でした。
 かき氷やジュースを売る店もありました。
 これは、馬場の横を流れる「瀬見の小川」です。雨の所為か、小川に入って遊ぶ子供は、今年はいませんでした(世界遺産なので、勝手に入っちゃダメ)。

 この時期の京都は外国人観光客が多く、会場でも多くの方を見かけました。 あと、弁天町ORC200の時に見かけた銃のレプリカが、ここでも売られていました。流行っているのでしょうか? 買ってみようかな? でも3000円は気軽に買えない値段ですしねえ……(買っても使い道がないし。値札には「コスプレにもピッタリ」とか書いてましてが……)。

 今回の戦利品はこちら。
  雨が降る前に帰ろうと急いで回ったので少なめ。
 デニス・ホイートリー著の「黒魔団」(国書刊行会)は、「ドラキュラ叢書」の第一巻。この叢書は他にブラム・ストーカーの「ドラキュラの客」と、H・P・ラヴクラフト他の「ク・リトル・リトル神話集」を持っています。
「異形コレクション読本」は、「異形シリーズ」が好きなので。ああでも、ほとんど読めてないなあ……。お薦めは「グランドホテル」かな。
  J・M・ストラジンスキー著「デーモン・ナイト」(ハヤカワ文庫NV)は、「モダンホラー・セレクション」の1冊(いや、2冊かな?)。この「モダンホラー・セレクション」集めてます。
 SFはこの3冊。
 ジャック・ウィリアムスン著の「パンドラ効果」(ハヤカワ文庫SF)は、作者で選びました。ウィリアムスンの短篇集なんて初めて見たので、衝動買いしました。 
 ジョン・バーンズの「軌道通信」(ハヤカワ文庫SF)は、末弥純さんの絵で表紙買い。内容も面白そう。
 フランク・ハーバート著「鞭打たれる星」(創元推理文庫SF)は、山本弘さんのブログの記事にタイトルが書かれていたのを見て「この本、古本市でたまに見かけるなあ」と思っていたので買ってみました。なんか変なストーリーみたいです。

 今日は生憎の天気でしたが、古本市は16日の日曜日まで開催されているので、興味のある方は行かれてみてはいかがでしょう。四条河原町の交差点にある、市バスのH乗り場から4または205系統のバスに乗り、新葵橋か糺の森のバス停で降りれば、徒歩すぐです。運賃は230円。小銭を用意しましょう。あと、暑さ対策と、虫除けも忘れずに。

 いやあ、危うく今年は行くのを諦めなきゃならないところでした。休みが他には16日の最終日しかない上に、その日は法事があるので、行く時間がなかったんです(古本市は午前10時から午後5時30分まで。ただし、最終日は午後4時まで)。雨止んでくれてありがとう! 
 来年もまた行きたいなあ。



2015年8月7日金曜日

『クレイヴァリング教授の新発見』感想

『クレイヴァリング教授の新発見』
パトリシア・ハイスミス著/小倉多加志訳
ハヤカワ文庫HM「11の物語」所収 初版2005年12月15日

 あらすじ・・・カリフォルニア大学の動物学教授エイヴァリー・クレイヴァリングは、太平洋のクワ島に生息する巨大カタツムリの伝承を知り、新種を発見して名声を得ようと、ハワイの近くにあるマトゥサス群島にやって来た。クワ島の伝承を本で紹介したステッド博士に会うも、博士は一度も見たことがないと否定的であった。クレイヴァリング教授は一人クワ島に渡り、そこで9メートルはある大きさの巨大カタツムリを発見した。証拠の写真を撮り島を出ようとした教授は、乗ってきた船が沖に流されているのを発見する。クレイヴァリング教授が戻らなければ、ステッド博士が探しに来てくれるはずだが、それまで教授を喰らおうと追ってくる巨大カタツムリから、逃げ延びなければならない。巨大カタツムリはゆっくりと、だが確実に教授に迫ってくる……。

 巨大生物モノは本・映画問わずありますが、これもその一種です。 9メートルの巨大カタツムリ……、想像もしたくないです。カタツムリの歯って、「庭などにいる小さなカタツムリでも上下に二万本ほどの歯が櫛の歯のように並」んでいるそうです。そんな歯の生えた口で噛み付かれたら……。しかも9メートル……。夢に見そうです。

 作者のパトリシア・ハイスミスは、「太陽がいっぱい」で知られる作家です。なので私は彼女の事をミステリー作家と考えていたのですが、こんな作品も書いていたのですね。ミステリーやサスペンスはあまり読まないので、この分野の作家がどんな作品を書いているのか、よく知りません。この作品を知ったのは、別のホラーアンソロジーか何かにタイトルが紹介されていたのを読んだからです。そうでなければ、ハイスミスは一冊も読まなかったでしょう。

「11の物語」は、ハヤカワ文庫HMから出版されたパトリシア・ハイスミスの短篇集です。この本には他にも「かたつむり観察者」という短編が収録されていて、そっちも「うわぁ……」っていう感じです。作者は幼少期に、カタツムリとなにかあったんでしょうか? カタツムリとかナメクジが嫌いな人にはお薦めできません。