『黄色い壁紙』
シャーロット・パーキンズ・ギルマン著/西崎憲訳
創元推理文庫「淑やかな悪夢」所収 初版2006年8月31日
あらすじ・・・精神に不調を抱える私は、夫のジョンと夏の休暇を過ごす家を借りた。立地も建物も素晴らしいその家は、一つ奇妙なところがあった。……部屋の壁紙。黄色い壁紙が、私の注意を惹きつけた。不思議な模様の壁紙を見つめていると、その表面に、女の姿が見えてきた……。
なんと言いますか、読んでいるこちらのほうが精神に不調をきたしそうな話です。
訳者の西崎さんは、巻末の対談で「改行が怖い」といってますが、確かに改行ごとに話が変化していくように感じられました。「これは人というか、状況というか、それが少しづつねじれていく話なんですが、そのねじれを文で書かない。説明しない。改行でやってしまう。たとえば、あるところまで主人公はこういう認識を持っていたが、次の行ではすでにその認識が変わっている」確かに、ラストなんかは「あれ?」っと思いました。
これはすべて主人公の狂気が生み出した幻なのか、本当に女の霊が存在するのか、読み手によって感想が変わりそうです。
この話が発表された時、ボストンの医師が「こんな小説は書かれるべきではなかった。読んだ者が誰であれ、正気を失わせること疑いなしだ」と抗議したらしいです。本人は批判してるつもりでしょうけど、褒め言葉にしか見えない。「こんな小説は書かれるべきではなかった」という表現がふるってますね。
作者のシャーロット・パーキンズ・ギルマンは、自身もうつ病に罹り、この小説の主人公のように「知的な活動をせず、安静にする」という治療を受けさせられ、かえって病状が悪化した経験があるそうです。経験に裏打ちされたストーリーということです。怖い。
「淑やかな悪夢」は、倉阪鬼一郎・南條竹則・西崎憲編訳の女性作家によるホラーアンソロジーです。正直、私は殆どの作家の名前を知りませんでした。
最初に収録されているシンシア・アスキスの「追われる女」のオチが、完全にラフカディオ・ハーンの「むじな」なんですが……?
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