『廃墟にて』(ネタバレあり)
ロアルド・ダール著/吉田誠一訳
創元推理文庫「年間SF傑作選6」所収 初版1975年3月14日
あらすじ(ネタバレあり)・・・廃墟であった男は、自分の左脚をのこぎりで切っていた。麻酔を射ってているので痛くはないのだという。「少しご入用ですか」問いかける男に私は「ええ、どうかお願いします」と答えた。空腹で気が狂いそうだったのだ。男は医師で次の食事を提供してくれれば分けてくれるという。火を起こして肉を炙っていると、少女がやって来た。「あんたも少し欲しいの?」医師の問いに少女は頷く。「あとでお返ししなくちゃいけないんだよ」医師は言う。「こうして三人そろったのだから、しばらくは生き延びられそうですね」
ページにして2ページ。20行ほどのショートショートですが、並の長編小説より印象が強く残りました。いわゆる「アフターマス」ものです。崩壊した廃墟で出会った3人の短い会話だけの物語ですが、会話の内容を考えると……。無駄な部分をそぎ落として、最小限の文字数で表現された、シンプルで静かなストーリー。それでいて忘れがたい印象を残す作品だと思います。他にも沢山色んな作家の作品が収録されていますが、この話ばかり読み返しています。
作者のロアルド・ダールは、映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作者としてのほうが有名でしょう。いわゆる「奇妙な味」と呼ばれるタイプの作品を多く書いている人です。短編の名手と呼ばれているそうです。
「年間SF傑作選6」はジュディス・メリル編のSFアンソロジーです。先日の「第25回 弁天町 ORC 200 古本祭り」で購入したものです。
ショートショートというとやはり星新一さんを思い浮かべます。小学生の頃よく読んでいました。筒井康隆さんの「笑うな」に収録されていたショートショートも、印象に残っています。ショートショートは無駄がない分、インパクトが有るように思えます。
作品の前にメリルの短い紹介文が載っていますが、それもなかなか面白い文章です。